【忘却のサチコ】第106話「時をかける恋歌・前編(滋賀)」ネタバレ感想です。

忘却のサチコ

阿部潤先生の『忘却のサチコ』の最新話のネタバレ感想になります。

 

 さて前回の中華街編から舞台はまったく変わり、滋賀編になります。

 どういう展開なのでしょうか?

 

・カフェで打ち合わせです

 カフェで美酒乱先生の新作のプロット案を読み始めるサチコ。

 ソファ席で身じろぎせず正座で読むサチコを指さす子どもがいてもまったく動じることはありません。

 その間、居心地悪かったのか、創作の苦労を聞かれても以内の語り出す美酒乱先生。

 あまりに反応がないので気弱な発言が出かけそうになったところに、サチコが口を挟みます。

 美酒乱先生は息を呑みます。

 サチコの口から出たのは、素晴らしいとの評価の言葉でした。

 百人一首の恋の歌をモチーフにした物語構成に、紫式部がタイムスリップしてくる古典とSFがミックスされているのが斬新と、べた褒めです。

 その言葉に美酒乱先生はでれでれです。

 コホンと一つ咳払いして決め顔を作ると、如何にも文学的なテーマを語る美酒乱先生。

 まさに直本賞を狙うのにふさわしい作品ですと、さらに褒め立てるサチコに、美酒乱先生の笑いが止まりません。

 

・そんなサチコさんを狙う美酒乱先生の企み

 嫌らしい笑いを浮かべた美酒乱先生はサチコさんに取材旅行のお誘いをします。

 いつもだったらサチコさん一人の所を、男女二人で、つまり自分もついて行くと言い出したわけです。

 真面目な顔を向けられて焦ったように言い訳をする美酒乱先生。

 あたふたと手を振りながら、百人一首の舞台の地で想いをはせてみたらどうかと訴えます。

 そんな苦しい言葉にあっさりと了解を出すサチコさん。

 むしろ美酒乱先生の方がびっくりするほどのものでした。

 それでも、しっかり別の作品の締め切りを短くするところは、流石やり手のサチコさんです。

 

・取材当日、待ち人来たらず?

 取材当日、東京駅で待つサチコの所に一つのメールが届きます。

 それは、あれほど行きたがっていた取材旅行に来られなくなってしまったという美酒乱先生からのものでした。

 先生に一体何があったのか、それはすぐ明かされます。

 病院で横になっている美酒乱先生。

 机に座りすぎていた結果、先生は痔が成長しきってしまっていたのでした。

 

・滋賀を一人旅

 一人で取材をすることになったサチコさんはもちろん張り切ります。

 まずは蝉丸の神社を訪れるわけですが、何と参道に線路があるというすごい立地でした。

 驚きながらも歌碑に辿り着いたサチコさんは、想いをはせながら歌を詠みます。

 「これやこの」歌を詠みながら、サチコさんは人と人との出会いと別れに想いをはせます。

 すると思い出すのは、結婚式当日に俊吾さんに逃げられた忌まわしき過去でした。

 フラッシュバックにダメージを受けながら、次の目的地に向かうサチコさんでした。

 

・次は逢坂の関へ

 無事に逢坂の関で資料写真を撮っていたサチコさんでしたが、公衆トイレになっていたことに困惑しています。

 それでも歌碑をチェックして、無事に発見します。

 ここにあるのは清少納言の「夜をこめて」と、三条右大臣の「名にし負はば」の二つの歌碑です。

 共に恋の歌の歌碑ですから当然思い起こすことはやはり俊吾さんの事です。

 

・夢でもし逢えたら

 気付けばサチコは十二単を着て、寝殿で眠っています。

 そこにチュンチュンと鳥の鳴き声がするのです。

 それは人が為した偽りで、サチコさんはすぐに俊吾が発したものだと気づくと、見えぬ姿を追い求めます。

 次の瞬間、歌通りに実葛がサチコさんの手に絡みつき、導いた先には、迎えに来たという俊吾さんがいたのでした。

 

・しかしそれは勿論妄想

 トイレ清掃のおじさん達から声を掛けられ、トイレの前で呆然と立ち尽くしていたことにサチコさんは気付きます。

 しばらく忘れていたことが次から次に出てくるのは、流石の千年の時を越えてきた恋の歌の力です。

 何とか忘れようと町をさまよい歩くサチコさんです。

 とにかく何か食べて記憶を忘れようとするサチコさん。

 その前に現れたのが、日本一のうなぎという看板をかけたうなぎ屋でした。

 

・逢坂山かねた

 流石にお昼からの鰻は贅沢だと二の足を踏むサチコさんでしたが、匂いに釣られて結局入ってしまいます。

 風情ある日本庭園が特別かと思いきや、本当に特別なのはメニューでした。

 それはきんし丼というものでした。

 このお店で生まれた特別なメニューで、値段も頑張れば届くものでした。

 サチコさんは心を決めます。

 出てきたきんし丼は、鰻丼にだし巻き玉子が乗っているものでした。

 つやつやで綺麗なだし巻き玉子は、何重にも重ね上げられた厚みがあります。

 勿論ふわふわで、玉子の優しい甘味に醤油強めの鰻のタレが利くことで深い味わいが生まれています。

 鰻は鰻でパリッ、フワッ、トロッの三拍子揃った焼き加減です。

 噛みしめるたびに旨味が満ちてサチコさんはご満悦となります。

 そして、いよいよ同時に食べる時がやってきます。

 鰻と玉子のハーモニー、そして溶けあう旨味とご飯の絡みがサチコさんを多幸感に導きます。

 これが滋賀生まれの「きんし丼」でした。

 

・気を取り直して取材再開

 気を取り直して取材を再開するサチコさん。

 海辺にて開いたページには、二条院讃岐の「わが袖は」の歌がありました。

 勿論涙の歌から導かれる記憶は、サチコさん自身の涙のエピソードの数々でした。

 ここで、美酒乱先生の言葉を思い出すサチコさん。

 確かに、溢れ出る気持ちがブワッと出てきてしまっています。

 忘却してもし尽くせない恋の歌の力に圧倒され、取材の行方が不安視されるところで次回へと続きます。

 

・今回の感想

 今回は百人一首を舞台とした滋賀の旅ということで、百人一首の名句がたくさん出てきましたね。

 それにしても、美味しい食べ物の力を持ってしても忘却できない恋の歌の力は流石としか言いようがないです。

 紀貫之が古今和歌集の仮名序で言っているように「力をも入れずして、天地を動かす」というだけはあります。

 しかし、それをさておいても「きんし丼」美味しそうですね。

 鰻の上にだし巻き玉子だなんて美味しいに決まっている組み合わせです。

 是非、実際に滋賀に行ったら食べてみたいものです。

 さて、次回は後編なのですがサチコさんの取材は無事に終わるのでしょうか?

 また思い人が出てきてさらに大変なことに何てこともありうるわけです。

 やっぱり目が離せない作品ですね。

 

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